JAK阻害薬のphaseⅡ・Ⅲ試験のメタ解析では静脈血栓塞栓症リスクは増加していない

2021年5月5日水曜日

JAK阻害薬 静脈血栓塞栓症

t f B! P L
JAK阻害薬と静脈血栓塞栓症VTEリスクの関連は毎回読むたびに違う話が出てくるので,結局どう考えたらよいものか自分でも整理がついていない.
比較的最近の文献で纏まってるのはARDに載ってたConsensus StatementのVTEのところ.

・トファシチニブ:現在進行中の心血管リスクの多いRA患者での試験で,10mg2回では肺塞栓増加認め打ち切り(認可されている5mg2回は結果待ち).
・バリシチニブ:4mgではvsプラセボ・アダリムマブの試験でVTEリスク増加の報告あり.
・ウパダシチニブ:主に15mgでvsプラセボの試験でVTEリスク増加の報告あり.

引用元:Nash P, Kerschbaumer A, Dörner T, et alPoints to consider for the treatment of immune-mediated inflammatory diseases with Janus kinase inhibitors: a consensus statement
Annals of the Rheumatic Diseases 2021;80:71-87.

といったところだが,別の試験ではリスク上昇を認めなかったり.現状はどのJAK阻害薬もVTEに関する警告を書くようになっている.
今回はJAK阻害薬(トファシチニブ,バリシチニブ,ウパダシチニブ,フィルゴチニブ)のphaseⅡ・Ⅲ試験のメタ解析でVTEリスクを評価したもの.


■JAK阻害薬の認可された用量でのPhaseⅡ・PhaseⅢの二重盲検化RCTをメタ解析.
トファシチニブが25試験,バリシチニブが6試験,ウパダシチニブが6試験,フィルゴチニブが5試験.
関節リウマチだけでなく潰瘍性大腸炎,クローン病,PsA,ASも含まれている.

■プラセボと比較して,JAK阻害薬のpooled Incident rate ratios(IRRs)はVTE0.68(0.36-1.29),PE0.44(0.28-0.70),DVT0.59(0.31-1.15)だった(明らかなリスクの増加を認めず).


引用元:Yates, M., Mootoo, A., Adas, M., Bechman, K., Rampes, S., Patel, V., Qureshi, S., Cope, A.P., Norton, S. and Galloway, J.B. (2021), Venous Thromboembolism Risk With JAK Inhibitors: A Meta‐Analysis. Arthritis Rheumatol, 73: 779-788. https://doi.org/10.1002/art.41580


ということで,Conclusionは結構強気に「今のWaringを支持するようなエビデンスは得られませんでした」と押している感じ.

ただこれで「なんだ大丈夫じゃん」とは個人的には思えず..
RCTの患者層で大丈夫でも,より様々な背景を持っているリアルワールドでどうなるかは別物ではないか(ステロイド使用や年齢・ADL等々の他のVTEリスクとの合わせ技でどうなるのか),抑えるJAKによって差がないのか(特にトファシチニブは結果が気になるところ),用量依存性の差がどの程度あるのか,,等々まだ疑問は尽きないところ.

少なくとも肺塞栓既往やmassiveなDVTの既往がある例では,絶対使わないとは言わないまでも他の選択肢もしっかり検討してから相当慎重に判断するままだと思う.

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駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

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