免疫チェックポイント阻害薬による筋炎の特徴

2021年5月17日月曜日

筋炎 免疫チェックポイント阻害薬

t f B! P L
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与中の筋炎の経験は個人的に経験したことはなく,カンファレンスで話題に上がってチラッと聞いた程度.
何となく心筋炎・重症筋無力症がなぜかよく合併するという話は聞いたことがあるが,どの程度の頻度・合併率・予後なのかはまとまって勉強したことがなく,あまりまとまった報告もない.

今回はその疑問に応えてくれる研究.

■2016年から2019年の間にテキサス大学MDアンダーソンがんセンターでICI投与を受けた患者の後方視的コホート研究.

■ICI投与を受けた9088例のうち,36例(0.40%)でICI筋炎があり.
17例(47%)はICI筋炎単独で,19例(53%)はオーバーラップする症状があった(5例が心筋炎,5例が重症筋無力症,9例が両方とも合併).

■症状は当たり前かもだが倦怠感,脱力,筋痛が多い.CKは中央値は2299U/Lだが,23-24485U/Lと振れ幅は大きい.

■心筋炎や重症筋無力症のオーバーラップがある例は予後不良で,79%で呼吸不全あり.
■ICI筋炎の結果死亡した8例は,全例が心筋炎あるいは重症筋無力症を合併していた

Aldrich, J., Pundole, X., Tummala, S., Palaskas, N., Andersen, C.R., Shoukier, M., Abdel‐Wahab, N., Deswal, A. and Suarez‐Almazor, M.E. (2021), Inflammatory Myositis in Cancer Patients Receiving Immune Checkpoint Inhibitors.
Arthritis Rheumatol, 73: 866-874. https://doi.org/10.1002/art.41604


まとめると,頻度自体は稀だが,半分は心筋炎や重症筋無力症を合併するとのことで,それらの精査も必須.合併例は呼吸不全・死亡など予後不良だが意外と筋炎単独なら死亡例はない.
あと治療についても本文で触れられていて,多いのはステロイドに加えてIVIG,血漿交換で,生物学的製剤使用例もある.ただイマイチどれがいいかはよく分かってないよう.

特徴的なので一度聞いたことがあると覚えてるが,基礎知識なく診ると「なぜ心不全?」「なぜ重症筋無力症?」と訳わからないうちに持っていかれそうなので,一度は勉強しておきたい.

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駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

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