高齢発症SLEの特徴

2021年4月10日土曜日

SLE

t f B! P L
一般的にはSLEは若い女性の病気だが,しばしば高齢者でSLE疑いで紹介になるケースもある.
不明熱,胸腹水が溜まってて,測ってみたら抗ds-DNA抗体陽性で,他にあんまりそれっぽい特徴もなく,本当にSLEでいいのかと思いつつも他の鑑別も進んでいるので治療したらそれなりに効いて,みたいな印象.
過去にも結構まとまった報告はあって,大まかに言われているのは皮疹が少ない,漿膜炎が多い,補体低下は少ない,といったところ.
今回は結構なn数集めてきた研究でどうだったかをご紹介.


■スペインリウマチ学会のSLE患者全国レジストリを用いた,SLE3619例での横断的後ろ向き研究.
■高齢発症(>50歳)SLEが565例(15.6%),若年発症(≦50歳)SLEが3054例(84.4%).

■診断時の臨床症状について,
・若年発症SLEに比べ少ないもの・・・蝶形紅斑,光線過敏,粘膜潰瘍,関節炎,蛋白尿,尿円柱,血小板減少(<2万),抗DNA抗体,抗Sm抗体


■診断以降の経過での臨床症状について,
・若年発症SLEに比べ多いもの・・・関節炎,血栓イベント(肺塞栓,DVT),心臓障害(狭心症,AMI,心筋症),うつ病,LAC陽性,(統計学的に有意ではないが漿膜炎も多い傾向と著者は記載)

・若年発症SLEに比べ少ないもの・・・腎障害(ループス腎炎),炎症性皮疹,脱毛症,無血管性骨壊死,レイノー現象,頭痛,抗DNA抗体,抗La抗体,抗RNP抗体,低補体,SLEDAI>6


■高齢発症SLEでは若年発症例よりも診断の遅れが見られた(45.3日vs28.1日,P<0.001).
■高齢発症SLEでは免疫抑制剤の処方頻度が少なかった.

引用元:Anne Riveros Frutos, Susana Holgado, Arantza Sanvisens Bergé, Irma Casas, Alejandro Olivé, Francisco J López-Longo, Jaime Calvo-Alén, María Galindo, Antonio Fernández-Nebro, José M Pego-Reigosa, Iñigo Rúa-Figueroa, the RELESSER Group, Late-onset versus early-onset systemic lupus: characteristics and outcome in a national multicentre register (RELESSER), 
Rheumatology, Volume 60, Issue 4, April 2021, Pages 1793–1803, https://doi.org/10.1093/rheumatology/keaa477


こういう研究は数があるほど強いが,特徴としてはいままで言われていたことと同様かな.ただ肺塞栓や心臓関連のリスクはあまり注目していなかった.
加齢による一般的な心血管リスクの上に,SLE自体の凝固異常や動脈硬化リスク上昇が加わるので,当たり前っちゃ当たり前だが.
既知の心血管リスクに対する評価を忘れず,薬物治療のハードルも自分の中で低めにしないといけないかなと.

免疫抑制剤の使用が少ないのは,SLEDAIが低い例が多いのと併せて考えるとステロイドだけでも活動性がコントロールできているのか,あるいは併存症が多いのと併せて考えると使いたくても使いにくいのか.
どっちもかな.確かにSLE自体が若年者みたいに暴れまわることはあまり記憶にないけど,肝腎障害でMMFやCNIが使いきれず,あるいは使っても感染起こして結局中止になったりというパターンは多い.

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駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

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