HCQ/CQとSLEの死亡率の関連(用量反応性・死因ごとの関連)

2021年4月8日木曜日

SLE ヒドロキシクロロキン

t f B! P L
僕が膠原病内科医になった時点ではもはやSLEで投与するのが日本でも当たり前になりつつあるヒドロキシクロロキン(HCQ).
網膜症には注意が必要ながら,臓器障害や死亡リスク,血栓リスクの低下など免疫抑制剤でもないのにいいことづくめで,ありがたいことだなぁと思う.
投与するのが当たり前にはなっていて,どういう量でどう効果があるのか,それ以上細かいことは個人的にあまり気にしていなかった.今回紹介する論文はその辺りに切り込んだ話.
中国からの論文.最近勢いがすごい.

■1999-2009年に中国江蘇省で最初に入院したSLE患者のデータベースを用いて,2010-2015年まで生存状況をフォローアップ.HCQ/CQの処方が含まれる記録を抽出.2446例のSLE患者が含まれた.

■HCQ/CQ非使用例と比較して,全死因死亡率低下はHCQ/CQ使用例と関連していた(HCQ:aHR0.49, 95%CI:0.49-0.67,CQ:aHR0.49, 95%CI:0.27-0.87).
併存症や臓器障害ごとのサブグループで見ても関連性はほぼ同様.

■HCQ/CQの使用時間・1日量の両方が,SLEの死亡率低下と線形の用量反応関係を示した.

■死因毎の解析では,腎不全による死亡(aHR0.23, 95%CI:0.09-0.55)・他の臓器障害(心肺,胃腸,血液)による死亡(aHR0.25, 95%CI:0.10-0.62)と負の相関があった.
一方で感染症と神経精神障害による死亡には有意な関連はなかった.


引用元:Ziyi Jin, Fan Wang, Wenyou Pan, Lin Liu, Min Wu, Huaixia Hu, Xiang Ding, Hua Wei, Yaohong Zou, Xian Qian, Meimei Wang, Jian Wu, Juan Tao, Jun Tan, Zhanyun Da, Miaojia Zhang, Jing Li, Xuebing Feng, Lingyun Sun, Association of antimalarial drugs with decreased overall and cause specific mortality in systemic lupus erythematosus, 
Rheumatology, Volume 60, Issue 4, April 2021, Pages 1774–1783, https://doi.org/10.1093/rheumatology/keaa485

用量に関しては添付文書と<5mg/kgの推奨を守りながら,正直「入っていればちょっと少な目ぐらいでいいかな」と勝手に思っていた..
ただ網膜症リスクも用量と時間とともに上がるので,この辺りはなかなか難しいところ.結局今までの投与量から変えるでもないとは思う.

HCQは一応感染症リスクを減らすと一般的には理解されていて,厳密には見ているものが違うとはいえ,感染症「死亡」を減らさないかどうかはこれ単独では判断できないか.神経精神ループスも血栓系の機序の分はリスク減りそうなものだが.
「死因別で見たら有効性に差があるかも」という目では見ていなかったのでそういう意味では面白かったです.

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駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

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