なんせ過去29例しか報告がないので当然かもしれないが,こういうのは得てして知らないからスルーされているパターンだと思うので,膠原病・皮膚科関連の方はぜひ目を通していただけるとよいかと.
とりあえず症例のとても簡単な概略だけご紹介.
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■57歳のアフリカ系アメリカ人,2年前から掻痒感を伴う皮疹が顔から前腕,背中,耳,手背,腹部にまで進行.
■皮疹は角化性毛包性丘疹.抗Tif1γ抗体陽性.
■皮疹の性状や皮膚生検などからWong型皮膚筋炎と診断.
■過去に29例しか報告がない.アフリカ系アメリカ人での報告は本症例が初めてとのことで報告.
引用元:
Bax, C.E., Grinnell, M., Concha, J.S.S. and Werth, V.P. (2021), Wong‐Type Dermatomyositis in an African American Patient. Arthritis Rheumatol, 73: 630-630. https://doi.org/10.1002/art.41629
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皮疹の性状がかなり非典型なのは画像でなんとなくわかるが,これだけ読んでも珍しい以外何が何だかだと思うので,引用されている過去の症例と合わせた26例のレビューをしている症例報告もご紹介.
白人の症例で皮疹のイメージはこっちの方がつかみやすいかも.
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■Wong型皮膚筋炎とは:毛孔性紅色粃糠疹の毛包性丘疹を彷彿とさせる角化性毛包性丘疹を特徴とする皮膚筋炎のバリアント。
■毛孔性紅色粃糠疹やDLEと診断されてしまう可能性がある.
■病理所見では基底空胞化やムチン沈着などの皮膚筋炎の病理所見が鑑別点だが,角質増殖によりマスクされてしまう可能性がある.
■発症年齢は小児から成人まであり(10-60代と幅広い).
■関連する筋炎の発生率は今のところ古典的なDMと同程度.
■悪性腫瘍との関連は明確でない(過去の報告の一部は古典的皮膚筋炎を含めて報告しており,Wong型皮膚筋炎のみに絞ると1例のみ.5年後に悪性腫瘍の診断を受けたが,筋炎との関連は不明確).
引用元:Mutasim, D.F., Egesi, A. and Spicknall, K.E. (2016), Wong‐type dermatomyositis: a mimic of many dermatoses. J Cutan Pathol, 43: 781-786. https://doi.org/10.1111/cup.12733
まあ毛孔性紅色粃糠疹自体がそもそもピンと来ていないのだが..毛孔に一致した角化性丘疹に要注意というところ?生検をよく見たら鑑別自体はできるよう.
筋炎症状があったら多分うちの科に紹介が来て,「なんか皮疹は変やけどまあ皮膚筋炎でええかな」とスルーされるも方針は変わらない結果になっているかも.
問題は非筋炎性の報告もちらほらあるので,皮膚科から「膠原病っぽさがあるけど何とも言えない」と紹介受けた時に「この皮疹は膠原病じゃないです」って即お返し返事してしまうパターンが最悪かな..
皮膚生検から自力で診断できなくても,少し疑った時に「こういう病気もありますが・・」とsuggestionできれば幸い.
29例しか報告されてないものを一々調べるのも面倒かと思ったが,そういう症例拾い上げられるかがデキる膠原病内科医の境界線のような気がして.
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