多発血管炎性肉芽腫症患者の無治療寛解維持率とその因子

2021年3月29日月曜日

シクロホスファミド リツキシマブ 多発血管炎性肉芽腫症

t f B! P L
個人的には多発血管炎性肉芽腫症(GPA)はしぶとく再発して,なかなかステロイドも減らせず苦しむイメージ.
なので無治療で寛解維持をできるという発想がそこまでなく,論文タイトルみた時点でやや驚き.ずっと病棟管理がメインで外来経験が少ない分,ツワモノばかり目にし過ぎという大きなバイアスはもちろんあるけど.
実際どんなもんだろう,果たして予測因子などあるのか,読んでみたのが今回の論文.


■フランスのGPA患者レジストリから,GPA患者の治療中止後の寛解維持(Susteined Remission Off-Therapy:SROT,ステロイド・免疫抑制剤なしで6カ月以上BVAS0と定義)の率と関連する因子について調べた研究.
795例が組み込まれ,診断後3年・5年・10年時点でそれぞれ評価.

■10年間フォローアップを受けた例で,10年間SROTだった例は7%.

■SROTの有無でベースラインの特徴に差はなし.
■診断後3年間SROT例は寛解導入にIVCYを受けている例が多く,IVCYの回数も多い(中央値7.5回vs6回).
 診断後5年間SROT例はIVCYの回数が多い(中央値9回vs6回).
 3年・5年ともSROT例では維持治療にリツキシマブを使用している例が多い.

引用元:Puéchal, X., Iudici, M., Pagnoux, C., Karras, A., Cohen, P., Maurier, F., Quéméneur, T., Lifermann, F., Hamidou, M., Mouthon, L., Terrier, B., Guillevin, L. and (2021), Sustained Remission of Granulomatosis With Polyangiitis After Discontinuation of Glucocorticoids and Immunosuppressant Therapy: Data From the French Vasculitis Study Group Registry. 
Arthritis Rheumatol, 73: 641-650. https://doi.org/10.1002/art.41551

臓器病変毎に特徴が出るかとも思ったけど,ベースライン時点で難渋しそう・しなさそうとは言えないと.

むしろ寛解導入治療の重要性を強調する結果に.
確かに血管炎に限らずだが,「寛解導入にはすっきり反応したからIVCY早々にやめます」と中途半端にして,維持治療に入るあたりで「免疫抑制剤いじってもステロイド減量できません」と苦労するパターンはしばしば見る.安定した寛解維持はしっかりとした寛解導入ありきなのかなぁと再認識した次第.
じゃあIVCY9回やるんかと言われると日本人にそんなゴリゴリ行ってしまっていいかはまた別問題ですが..

あとやっぱりRTXは偉大.drug freeを目指した寛解維持治療はRTXという話にもなってくるのかも?根拠としては弱いながら,一応リンパ球数やANCAのtiterから先制気味に治療再開も出来なくはないし.
寛解導入のRTXかなり少ないようだったが,時代的な問題なのかまだまだ寛解導入の1stは海外でもIVCYなのか.

あと10年でSROT7%というのは実感としてどうでしょうか?そんなにいるのか,一度自施設の上級医に聞いてみようと思います.ただそもそも日本でGPA自体少ないというのが我々には最大のlimitationかも知れません.

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駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

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