関節リウマチの炎症の推移と脂質・トロポニンの変動

2021年6月29日火曜日

関節リウマチ 心血管疾患

t f B! P L
関節リウマチ患者(RA)のlipid paradoxは有名で,脂質が低い層はかえって冠動脈疾患(CVD)リスクが高い.慢性炎症があると脂質の数値は下がるが,関節リウマチのCVDリスク自体は×1.5倍に計算しなさいと習う.

ただ炎症の変化とともに脂質がどう変化するのか,CVDリスクとどう関連するのかはあまり研究がない.
今回は経時的な炎症の変化と脂質の変化との関係,またCVDリスクのマーカーとしてしばしば検討されてるトロポニンとの関連などを調べた研究.


■縦断的RAコホートの患者196例で高感度CRPを評価し,1年以上あけて任意の2回で高感度CRP≧1mg/dL以上上昇した群を「炎症反応上昇コホート」,1mg/dL以上低下した群を「炎症反応低下コホート」に層別化.
脂質マーカー,心筋マーカーを測定し変化を比較.

■炎症反応上昇コホートにおいて,
高感度CRPは平均3.6mg/dL上昇し,LDL-c,TG,T-chol,Apo B,Apo A-1濃度の低下と有意に相関していた.

■高感度トロポニンTについて
炎症反応上昇コホートではベースライン時点で45.6%が高感度トロポニンT陽性で,炎症反応上昇に伴い有意な上昇を認めた(p=0.02).NT-proBNPも上昇.

炎症反応低下コホートではベースライン時点で42.4%が高感度トロポニンT陽性で,炎症反応が低下しても濃度は横ばいだった.

■どのコホートでも高感度トロポニンTはACC/AHA ASCVDリスクスコアと有意に相関していた.

引用元:Weber, B., He, Z., Yang, N., Playford, M.P., Weisenfeld, D., Iannaccone, C., Coblyn, J., Weinblatt, M., Shadick, N., Di Carli, M., Mehta, N.N., Plutzky, J. and Liao, K.P. (2021), Divergence of Cardiovascular Biomarkers of Lipids and Subclinical Myocardial Injury Among Rheumatoid Arthritis Patients With Increased Inflammation. Arthritis Rheumatol, 73: 970-979. https://doi.org/10.1002/art.41613



炎症反応上昇の経過に伴い脂質は下がるという結果.
どうしても忙しい外来だとCRPや関節数の評価に気を取られて,脂質の説明はチラっとLDL-cの値みて「コレステロールは低いし大丈夫」とか言ってしまっていたなあ..

この論文では代替的に高感度トロポニンTを推す流れで,確かに使えるかもしれないが,実際のCVDイベントではなくACC/AHA ASCVDスコアと比べているので,「関節リウマチ患者では脂質の動きが変だから普通のリスクスコアが使えないよね」と言いながら脂質がスコアリングに入っているものと比べてよいのかどうか疑問.

今のところ測ってトロポニン上がっていたとして,どれぐらいの上昇でどう実臨床に活かすのか具体的にはわからない.何かRA患者用のよいスコアリングが出てきたらよいのだが.

このブログを検索

ブログ アーカイブ

自己紹介

駆け出しの膠原病リウマチ内科医.今は毎日追いつくべくひたすら修行中.

連絡フォーム

名前

メール *

メッセージ *

QooQ